バスには国営バス(CTM)と民間会社の民営バスがある。
民営バスは料金勝負で多くの会社が乱立している。
ただ、ガイドブックやいろんな情報からも民営バスは出来れば避けた方が良いとある。
マラケシュからのアトラス越えでも我々は国営バス(CTM)を使った。
確かに快適で不安感も無かった。

ただし、ここエッサウィラからタルーダントへは国営バス(CTM)が走っていない。
民営バスにちょっと関心もあったので、民営バスに乗ることにした。
我々が乗り込んだそのバスは発車時刻を過ぎても、なかなか出発しようとしない。
バスターミナル内で後からあとから人を乗せていく。
ターミナルを出発しても、なにかに取り憑かれたように町角のあちこちで客を乗せていく。

初めは7割程度の乗客だったのにいつの間にかしっかり満席になった。
シートの前後の間隔も狭く窮屈で、エンジン音は異常に大きく、サスペンションはすでに無くなって久しい。
そんな車体でガンガンぶっ飛ばす。
エアコンはもちろん無いが走っている時は、まだいい。
天井の穴(!)や割れたガラス窓から風が入ってくる。
あちこちで客の乗り降りで止まると一気にムーとした熱気が車内に流れ込んでくる。
道の途中でも客が道端で手を挙げていれば止まり、降りたいといえば、また止まる。
停留所の定まらない各駅停車のバスと言ったら結構正しい。
そのうち峠にさしかかり、狭くて暑い車内でひとりまたひとりと車酔いでぐったりしはじめた。
乗り込んでいる車掌が、なにやら客に声をかけた。
あちこちの乗客からビニール袋や空のペットボトルが差し出された。
車掌はペットボトルを2つに切り(ナイフをいつももっているんだ!)、酔った客に渡す。
客はそれにもどしはじめた。もどしたものを大事そうに両手で持ってうつろな眼差しだ。
それどころか、嘔吐物の入ったペットボトルやビニール袋をもったまま客が車内をフラフラし始めた。
それを捨てる場所を探してるようだ。
汚物がペットボトルの中でチャポンチャポンと揺れて、臭いを発している。
唐突に車掌がなんの意味もなく大きくホイッスルを吹いて、なにやら叫んだ。
いや意味はあるんだろう、きっと。
でも言葉も分からないし、バスが止まる訳でもない。
それどころか、客の赤ん坊がその音にビックリして引きつったように泣き始めた。
運転手はこれも意味無く警笛を鳴らしている。
沈没寸前のガラクタ潜水艦のような車内で、
あきらめ半分で引きつり笑いをしているとやっとアガディールへ到着。
3時間と言われる行程を5時間かかってしまった。
ここでタルーダント行きのバスに乗り換える。
バスはすぐに出ると言われたが、やはり、一向に出発する気配が無い。
暑いバスの中でひたすらぐったりと待っていると、今度は物売りが乗って来て商売がをはじめた。
菓子売り、バナナ売り、水売りにサングラス売り。
最悪なのは、なにやらメンソールの匂いがプンプンするつけ薬売り。
そのつけ薬売りはバスの通路に立って、がまの油売りよろしく口上を述べながら売り込みをしてサンプルを車内に廻しはじめた。
バス酔いに効くというのだろうが、キツイとげとげしい匂いなので帰って逆効果だ。
窓を開けようと試みたものの全く窓は動く様子はない。
時計売りから双眼鏡売り、果てはコーランの一節が書いてあるような小冊子を客に配り、祈りをはじめる輩まで乗ってきた。
その伝道者は乗客がたとえ無関心であっても自己陶酔をしながら延々と講釈をし続けていた。
一時間ほどのショッピングタイムがやっと終わってやっとバスはタルーダントへ向けて動き始めた。
ありがたいことに、タルーダントへの道はゆるやかに川沿いの道を走っていった。
多少はゆとりも出来て車窓から景色も眺めるゆとりも出来てきた。
乾期だというのスース川沿いに緑が多い。
豊かな土地といった感じだ。
17時過ぎにそのバスはやっとタルーダントに到着した。

しっかりとした城壁に囲まれた穏やかそうな町だった。
タルーダント 不思議なフレンドリーな町、へ
